自然と暮らしと血圧の話|第4回
ショウガに「血圧を下げる効果」はあるのか
ショウガは昔から漢方や民間療法に使われてきた代表的な食材です。
最近では「ショウガが血圧を下げる」という話題も多く見かけるようになりましたが、実際にどのような仕組みで作用しているのでしょうか?
今回は、腎血管性高血圧のラットにショウガ抽出物を与えた実験論文をもとに、科学的な視点で検証してみましょう。
研究論文にみるショウガの作用
高橋千尋氏の研究によると、腎血管性高血圧モデルラットにショウガ抽出物を経口投与した結果、血圧の上昇が抑制され、血管壁の肥厚も抑えられたとされています。
この作用にはTRPV1(バニロイド受容体)の活性化が関与していると考えられています。TRPV1が刺激されると、CGRPやSubstance Pが放出され、さらにeNOS(内皮一酸化窒素合成酵素)が活性化し、NO(一酸化窒素)の産生が促進されます。
NOが血管を「ゆるめる」メカニズム
NOは血管内皮細胞で作られ、血管を弛緩させて拡張する作用があります。これにより血圧は自然に低下します。
また、NOには血小板の凝集を抑える作用もあり、動脈硬化や血栓の予防にも寄与すると考えられています。
ショウガがこのNO産生に関わっているとすれば、それはまさに「食べる血管ケア素材」と言えるかもしれません。
でも、ショウガだけに頼るのは危険
大切なのは「ショウガさえ食べていれば安心」という考えに陥らないことです。
食材の効果には個人差がありますし、体質や摂取量、生活習慣などの複合的要素によって結果は異なります。
また、薬との併用によって血圧が下がりすぎるリスクもゼロではありません。自然素材だからといって万能ではないということも、覚えておきたいポイントです。
次回予告:NOって結局何者なのか?
第5回では、ショウガの章でも登場した「一酸化窒素(NO)」にスポットを当て、その生理的役割や医療分野での活用について詳しく解説します。
▶ 第5回:「NOって結局何者?血管を守る小さな分子」につづく
シリーズ名:自然と暮らしと血圧の話
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